借地法正当事由研究室
国家権力による人権侵害を規定した立法府
昭和41年6月30日 借地法等の一部を改正する法律 法律第93号
 昭和41年の借地法等の一部改正(以後、法改正)は、先の大法廷判決を前提に、 土地の合理的利用の促進および 借地借家に関する紛争の防止を目的に行われた。
 しかし、これは先の検証のとおり、土地所有者の所有権を制限した上で借地権者が土地を利用することは合理的とは言えないばかりか、裁判所が賃貸人の財産権を制約し、賃借人の利益だけを不当に保護する立法であり憲法違反である。
 以下では、大法廷判決を検証し修正しなかった法改正の審議過程と各条項について検証する。
大法廷が壊した私法契約の秩序を回復するどころか、国家権力が賃貸人の財産権を一方的に制約し賃借人の不当利益を保護する立法
昭和41年6月30日 借地法等の一部を改正する法律 法律第93号 は、
憲法違反である!
以下では、この憲法違反の改正法案の立法趣旨に関する大臣発言を検証する。
参議院法務委員会第13号(12)
また、賃貸人の権利を制限する裁判所の権限を中心に各条項を確認する。
第8条、9条、14条(13)
○国務大(石井光次郎君 借地法等の一部を改正する法律案につ提案理由を御説明いたします 最近における土地及び建物の利用の実情を見ます借家に関する紛争が相当多数におりこれ一面おいて宅地及び住宅などの社会的経済的事情によるものまする他面において土地及び建物の利用に関す現行の法律制度当事者間の利益を調紛争の発生をする面におなお十分でない点がことにもよるもの考えられましたがいまし借地借家に関する紛争を未然防止してその安定をはかるとともに土地及び建物の合理的利用を促進ために社会的経済的条件の改善にまだけでな現行の法律制度を実情に即して改める必要がのでの法律案はる見借地法建物保護法及び民法の各一部に所要の改正を加ようとするものであります 以下この法律案の要点を申し上げますと 第一借地権の目的たる土地の合理的利用を促進する事情の変更その他一定の要件が存する場合に所は当時者の申し立てにより一切の事情を考慮した上で堅固の建物所有の借地条件を堅固の建物所有の借地条件に更しまたは増改築の制限を緩和する裁判をするととも事者間の利益の公平をはかるために他の借地条件を変更したは財産上の給付を命ずる裁判をあわできものといたしておりますなおこの裁判は原則といたしまし借地の所在地の地方裁判所が非訟事件の手続により行なものと裁判所がこの裁判をするについては鑑定委員会意見を聞くことといたしております 第二借地上の建物の取引を円滑にするため土地賃借人がその建物を他人に譲渡しようとする場合におい土地の賃貸人が敷地の賃借権の譲渡または転貸を承諾しなとき裁判所賃借人の申し立てによ一切の事情を慮した上で賃貸人の承諾にかわる許可を与当事者間の利益の公平を考慮その許可に地代金銭の払いなどの条件を付することができることといたしておりする反面賃貸人の申し立てがあれば相当な対価を定めてそ建物を敷地の賃借権とともに賃貸人に譲渡することをずることができるものといたしておりまこの裁判 <前半省略> <以降省略> 51回国会 参議院 法務委員会 13号 昭4147 第八条ノ二に該当 三に該当 第九条ノ二に該当 条文を見る 全文を見る
新谷政府委 土地建物にまするわが国の特殊事情すか特に戦後非常にこの利用が窮屈になってくるということいろいろ社会的な問題にもなっております何と国民生活をより一そう安定したものにするためには土地なり建物さらに借地なり借家の関係につきましてよりよい制度に持っていっ紛争をなくするということが必要であろうと思わけでありま先ほど大竹委員のお話のようわが国の狭国土の中でこの土地を最高度に利用しなければならないいうことこれは当然のことでございまそうかいっ所有権は所有権て私権でございますのこれを尊ればませまた一方におきまし現在のわが国の特殊社会情勢から考えます権である所有その他の物権いえどやはり公共の福祉と申しますそういった観からの調整を受けることこれはまたある程度やむを得な問題であろうと存ずるわけでありまそうあってこそ初めこういった深刻な借借家の関係の問題も解決されるのあろうと思うわけでございまただ現在の法制下におまして紛争が起きま当事者間の法律関係の存否ついての争いまで初めて訴訟になるわけありま裁判所のいろいろの判決例を資料で差し上げございますが借地条件の変更を無断でやった場合あるいは借地上の建物を無断で第三者に譲渡したため賃借権の全体が無断で行なわれこういった問題が起きその法律関係がどうなる貸し主の側からいたしますれこれを解除して戻せという要求になってまいるわけでありましな一方では土地の最高度の利用ということも必要ございますのその辺に何らかの調整を加えることを考え必要があるのではあるまいかように考えられるわけであこれを従前のような訴訟の形にいたします法律関係すでにあるかないかというところに争点が集中いたしましそこまでまいりますとこれはまさに法律上の紛争でございます一般の訴訟によって解決するほかはないわけでありけれどこういった事件現在の訴訟事件の中でも占め割合が非常に多いわけでございま何とかいった紛紛争をあらかじめ予防できるものなら予防借り主と貸の間の利害の調整も十分にはていく方法とれますならば土地の利用も一期待できるのではあるまいかこういう観点に立ちまして今回の借地法等の一部を改正する法律案を提案いたすに至ったわけでございまお説のとお私権ではありますけれどやはりそのときどきの社会情勢これがマッチするものでなければなりませんのそういう意土地を合理的に利用するという目的のためいろいろ措置を講じた次第でございます <前半省略> <以降省略> 51回国会 参議院 法務委員会 31号 昭41426 全文を見る
新谷政府委員 ごく一般論としてまず申し上げますが、事件と非訟事件の相違点ということになろうかと思うわけございます 御承知のとおり法律上の紛争が生じましある一定の法関係があるかないかということが争いになりました場合その法律関係の存否を訴訟物といたしまして裁判所で判いたしますのが民事訴訟事件でございます く具体的にげまこの借地法に関上げますたとえば借り主が契約に違反したため貸し主がその賃貸借契約を解除しところ借り主ほうは解除される理由がないということでこれを争います賃貸借という法律関係が貸し主にしてみればすでに消借り主にしてみればまだそれは残るということ争いになるわけでございまし賃貸借関係の存否をいたしますのが民事訴訟でございましたがい訴訟きまそうう法律関係のあるかないかととを究極的に確定いたしますのがその目的でございま これにて非訟事件既存の法律関係があるかないということではなその法律関係を合目的的あるい衡平の見地から国家が個人間の法律関係に介その法律関係を合理的に変更しあるい新しく形成しということにあるわけでこれ訟事いわれものでごいまがい非訟事件いわれますもの一般の民事訴訟の対象になるものと全然性質を異にするわけでございまして、訴訟におい争われますものは、法律関係があるかないかという点でござす。非訟事件にきましこれと違一定の法関係く形成するとあるいは既存の法律関係を変更これによって国家が公権的な立場から個人間の法律関に介入して衡平な合目的的な結果をそこに生出していくここに非訟事件のねらいがあるわけでございます 両者の差異はそういう点にあろうかと思うわけでございます <前半省略> <以降省略> 51回国会 参議院 法務委員会 33号 昭4156 全文を見る
検証のまとめ
 以上の検証のとおり、「昭和34年(オ)第502号」(8)がゆがめた借地法の解釈・適用を前提に、土地の合理的利用の促進および借地上の建物の取引の円滑化を実現すべく借地法等の一部を改正した。
 しかし、契約終了の機会を奪い私法の秩序を壊した大法廷判決を検証・修正することなく、「土地の最高度の利用」という名目のもとに国家権力が賃貸人の財産権を制限することを認めた本改正法は憲法違反である。
 この改正法の経緯および追加された条項について検証することなく、後の平成3年の借地借家法(16)に引き継がれることとなった。
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