借地法正当事由研究室
誤りに気づくシステムの欠如が招いた違憲立法
平成3年10月4日 借地借家法 法律第90号
以下は意見広告参照
 これまでの一連の検証でみてきたように、借家における想定外への事態( 戦後の住宅難)への最高裁の判決内容と相容れない要旨の誤り( 双方の事情を比較考慮)が、やがて借地においても「半永久的に返ってこない」状況を生み出し、平成3年には借地借家法の制定に至ったのである。これは、司法の判断を立法府と行政府が検証し修正するシステムがないことの現れでもある。
 この立法過程で問題なのは、「半永久的に土地は返ってこない」こと自体が憲法違反であることに審議に参加した政府委員、国会議員その他法律の専門家も誰も気づかなかったことである。
 以下では、第121回国会における国務大臣の立法趣旨説明と政府委員の発言 を中心に仮説の検証を加え、新法が憲法違反であることを立証する。
左藤国務大臣 借地借家法案につきましその趣旨御説明いたします 現行の借地法におきまして借地権の存続期契約更新等につい借家法におきましては建物の賃貸借契約更新等についそれぞれ強行規定を中心とした民法の特規定が置かれているところでありますいずれも大正十年制定された法律であっ昭和十六年に改正された後まで基本的な枠組みは変わっておらこの間の社会情勢の大きな変化特に土建物の利用に対する需要の多様化に対応し切れていない状況になっておこれに対応するた借地借家法制のあり方について再検討を現行法見られる画一的な規律を改めてより利用しやすい借地・借家関係を実現するための手当てが必要であります この法律案このような見地に立っ借地借家及び建物保護ニ関スル法律を統合した単行法を制定現行の基本的な枠組みである借地権の存続期間地・借家契約の更新等の仕組みを見直してより公平なものとするほ新し類型の借地・借家関係を創設するなどの改善を図ろうとすものであります <前半省略> <以降省略> 120回国会衆議院法務委員会11号 平3426 全文を見る
○清水(湛)政府委員 そういうような実情を踏まえまして現実の実態を考えます一定の限度の範囲内でそういうものを制度化してそうい需要にこたえるということは借地法、借家法を所管してい法務省としても当然考えなければならないことだ、こういことが今回の定期借地権制度の創設の背景にあるわけございます 現行法の借地権についての規制が画一的である、これは何回申し上げていることでございますけれども、正当事由がない契約の更新を拒絶することができないということで、実質にはほとんど半永久的に土地は返ってこない、こういうよう状況になっているのが実情でございます。そこで、土地借りたい者の中には、そんなに。長期でなくてもいいけれどこの期間だけは間違いなく借りたい、あるいはこの期間だ貸してもらえばあとは間違いなく返すというような需要も実あるわけでございます <前半省略> <中盤省略> <以降省略> 121回国会衆議院法務委員会3号 平396 全文を見る
永井政府委員 現行法におきます正当事由の書き方先ほど鈴木委員の御質問にもお答えいたしましたとお例えば借地法でございます現行借地法第四条所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ正当ノ事由アル場という規定の仕方をしております。規定の仕方この昭和十六年当時貸し主の側に使用必要性があれば借り主の側の事情を考慮することなく立ち退を求めることができるというのが絶対的な条件にわけでございまそれでもう一正当ノ事といところいろいろな事情を考え貸し主の使用の必要だけなくてほかの事情がある場合もいわば立ち退きを求めことができます定ぶりにているわけでござこの規定ぶりをそのまま解釈いたします要する借りている側の事情は本来考えなくてもいそういう解釈従来されていたわけです。しかし戦後の判例によりましこれは社会的正義に反するのではないかという判例の動きよりまして、これは双方の事情を勘案しなさいというふう実務の取り扱いが変更になったわけでございます <以降省略> 121回国会衆議院法務委員会第2号 平3830 <前半省略> 全文を見る
○政府委(清水湛君 この正当事由条項につきまして立法当時におきまして貸し主がみずから使用する必要さえあれはこれは直ちに返しもらえこういうような説明がされたということも言われいるわけでございます しかしなが果たしてそれでいいのかどうかというようことが戦後の住宅宅地難の時代に非常に問題になりましこれは最高裁の判例までいろんな形で争われたわけでござますが結局そこに一つの判例法理としてまず貸し主側の事情借り主側の事情を公平に考えるべきであその他もろもろ正当事宙についての判断要素というようなものが指摘されわけでございます <前半省略> <以降省略> 121国会参議院法務委員会4 3919 全文を見る
検証のまとめ
 以上の検証のとおり、平成3年の借地借家法の制定過程における最大の問題は、「半永久的に土地は返ってこない」状況に触れつつも、このこと自体が憲法違反であることに国権の最高機関である立法府が気づかなかったことである。
 また、最高裁判例の動きに触れながら中身の検証をしなかった。これは大法廷判決というものがたとえそれが憲法違反であっても疑う余地のない圧倒的な既判力を持つことを示している。そして、この効力は新法制定後10数年経っても継続していることを法廷で確認したのが平成18年の小法廷判決である。
平成18年(オ)第1219号 を確認する