借地法正当事由研究室
間エンタープライズ株式会社
注1

はじめに

昭和37年6月6日最高裁大法廷判決は、借地・借家法等本来の立法趣旨とは相容れない戦後の正当事由制度の硬直的運用に対して、憲法適合性の審査を求めた事案である。

ところが、同大法廷は「借地法第四条第一項は、憲法第二九条に違反しない」としながら本来の立法趣旨とは似て非なる裁判規範を定立した。この点については、意見広告本稿でも展開したように、ワクチンを処方したとしながら、その中身は人権侵害ウイルスであったことになる。その人権侵害ウイルスとしての正当事由制度が、恰も立法本来の趣旨であったかの如くの金太郎飴的な当て嵌めが今日も繰り返されている。

当研究室本来の目的は、前述した同大法廷が侵した立法趣旨の改竄・捏造を含めた立法権侵害を証明することにあった。ところが借地・借家に関わる戦後の立法・行政・司法の在り方を検証するにつけ、官・学・産に携わる専門家の余りにもお粗末な検証能力の実態が炙り出されてきた。憲法の規定は、土地・建物の所有権者の権利も一般国民と同様に公平・公正を欠いてはならないはずであった。ところが、土地・建物の所有権者にとっては「自らの法の不知」を補ってくれるはずの日本弁護士会においても、官製のカンペを盲目的に追従したに等しい経緯実態がある。そこには、本来託されているはずの社会の公平・公正の防人としての使命感の欠落による死屍累々の惨状がある。

また、最高裁の機能不全は意見広告で引用した以外にも、公開質問書や一連の上告事案上訴理由書等で検証してきたが「開いた口が塞がらない」としか評せないようなお粗末な判決が散見されている。つまり、尤も高度の知的共有財産であるべき最高裁判決ですらその品質管理を疎かにしてきた実態があり、これにも司法研修所は一体なにをしていたのかと問わざるを得ない。

当研究室では、これを含めて素人故の独自の見解に過ぎないのかとの自問自答を繰り返してきたが、「門前の小僧習わぬ経を読む」の例えの如くに、ここに至る官・学・産の迷走の実態は到底看過し得ないとの判断から今般の意見広告に至ったものである。

また、借地・借家法の正当事由制度を含めた立法・行政・司法等の不作為の実態については、約15年を超える訴訟追行に伴い、当研究室の検証作業において蓄積してきた膨大な資料が手元にあるので、これも今後整理した上で暫時開示する予定である。

つづく